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雲雀生誕小説。
つづきよりどうぞ。
「…」
「…」
雲雀とアラウディはお互い無言で相手を見つめる。
先に視線を外したのはアラウディだった。
「正直、今回の事は僕には関係無いし、君が10代目ファミリーの守護者として認められなくても僕は困らない。だけど、雲の守護者の義務とか何とかで僕は君に試練を与えないといけないらしい。迷惑な話だよ」
「ちょっと、さっきから黙って聞いてれば何なの?僕が10代目ファミリーの守護者?冗談は止めてくれないかな」
アラウディの言葉の端々に納得出来ない単語を見つけ、雲雀は不快感を隠そうともせずに言う。
そんな雲雀の様子にも表情を変えることなく淡々とアラウディは答える。
「僕はその事に関しても関係無いよ。僕がここに来たのは君に試練を与えて、君がふさわしいどうかを見極める為だ」
「…」
一部を除いた雲雀を知っている人間なら脱兎のごとく逃げ出しそうな視線を受けてもアラウディは全く動じない。
「で、試練の内容なんだけど…君、スペードという男を知ってるかい?」
「スペード?」
「初代霧の守護者だよ」
「知らない」
素っ気なく答えた雲雀にアラウディはそれもそうかと1人で納得する。
「なら、10代目ファミリー霧の守護者、六道骸は知ってるよね?」
「…」
六道骸という言葉に対しての雲雀の反応を確認し、アラウディは言葉を続ける。
「彼を倒すこと。それが君への試練だよ」
「…」
「不満かい?君は彼を嫌っていると思っていたんだけど?」
自身に向けられる視線にアラウディは意外性を感じる。あっさりと承諾されないだろ
うとは思っていたが、雲雀は明らかに拒否を示していた。
「そうだよ。僕は六道骸が嫌いだ。だけど、貴方に言われてアイツを倒すのは違う」「…」
「六道骸は僕が、僕の意志で倒してこそ意味がある」きっぱりと言う雲雀には迷いなんて全く無いのと同時に、その考えを変えることなど無いという決意に満ちていた。
「…そう。君はやはりそうなんだね」
「何が言いたいの?」
「何でもないよ。試練を変えよう。僕と戦うんだ。最初に会った時に僕と戦いたがったよね?」
「貴方が本当に強いならね」
「強いよ」
「ならいい」
それだけ言うと雲雀は仕込みトンファーをどこからともなく取り出す。
雲雀の行動に不適に笑い、アラウディも武器を取り出した。
「手錠…」
「これは僕の武器だよ。雲のボンゴレボックスの武器はこれを真似したにすぎない」「ふうん」
ガキッ
「いきなり好戦的だね」
瞬時に間合いを詰め、振るわれた仕込み鉤をアラウディは手錠で受け止める。
「貴方だってそうでしょ。殺気、抑えてるつもりだろうけどわかってるよ」
「流石だね」
ガシャンッ
「!」
自身の右手にかけられた手錠に驚き、雲雀は反射的にアラウディから距離を取る。「さて、どうしようか?」
手錠から伸びる鎖を手にしながらアラウディは呟く。
雲雀はそんなアラウディを見た後、トンファーを振るい、手錠から伸びた鎖を断ち切る。
「僕を馬鹿にしてるの?本気でやってよ」
「本気でやったら君は死ぬよ」
「咬み殺してあげる」
「いいね。楽しくなりそうだ」
アラウディはその言葉が終わる前に地面を蹴る。
「!」
組み合った直後に繰り出された蹴りを寸での所で避けた雲雀が体制を立て直す前
にアラウディは雲雀の右手にかけられたままの手錠の鎖を引く。
「っ!」
「ピィッ」
完全にバランスを崩した雲雀に止めとばかりに攻撃を仕掛けるアラウディを牽制するように雲雀の愛鳥が一鳴きする。
アラウディが一瞬だけ鳴き声に反応したのを見逃すほど雲雀は愚かではなく、身体を捻り、アラウディに攻撃をしかける。
「邪魔だよ」
「ペットには優しいんだね」
「ロール」
アラウディの言葉に答えることなく雲雀が呟くと、雲雀のボックス兵器であるロールがアラウディを壁へと押し付ける。
「ピ?」
「いや、まだだよ」
愛鳥の言葉に雲雀が答えるのとほぼ同時に瓦礫の中からアラウディが姿を現す。
「その通り。僕は実体じゃないしね」
「それって僕はどうやっても勝てないって言いたいの」
「そうだよ。生身の君と実体の無い僕ではそもそも勝負になんてならないんだ」
「…」
その言葉に顔を歪め、雲雀はアラウディを睨み付ける。
プライドが高く、自身の強さを求める雲雀にとってアラウディの言葉は侮辱以外の何物でもない。
「でも、本気でやろうかと思ったのは久しぶりだよ」
アラウディの言葉に雲雀は再度ピクリと反応する。
「本気出してなかったんだ」
「そうだね」
「…」
雲雀の中でのアラウディの評価は骸に次ぐ嫌いな存在となっていた。
そんな雲雀の心情など知る由もなく、アラウディは言葉を続ける。
「そんなに睨まないでくれないかな。試練はもう終わりだよ」
「ふざけないで。貴方と戦って勝つのが試練とやらなんでしょ」
「僕は一言も僕に勝てなんて言ってないよ」
「?」
アラウディの言葉が理解できず、雲雀は訝しげにアラウディを見る。
「僕は戦おうと言っただけで、勝てなんて言ってない」
「…」
「僕は君の考えや力が知りたかっただけだ」
「…」
「君は僕の最初の案を拒否した。その結果、継承が出来なくなるかもしれないのに」「そんなものどうだって…いいよ」
雲雀の攻撃をアラウディは簡単に避ける。
「そして、誰にも屈せず、何者にも捕らわず、流されないその思考と行動。自身を貫くだけの力」
「黙りなよ」
雲雀の攻撃はことごとく空をきる。
「合格だよ。継承を許可しよう」
「ふざけないで」
「何が不満なんだい?」
「継承なんてどうでもいい。僕は貴方と戦って、貴方を咬み殺したいんだ」
「本気でやるとうるさい奴がいるから嫌なんだけど…仕方ないね」
雲雀が引く気が全く無い事に気付いたのか、アラウディは仕方が無いといわんばかりの表情をしながら再度武器を構える。
「…」
「いくよ」
「っ…」
「まだだよ」
「ぐっ・・・」
「これならどうかな?」
雲雀も上手く攻撃を凌いではいるものの、経験の差は大きく、本気を出したアラウディに軽くあしらわれる。
ガッ
地面に叩きつけられ、一瞬呼吸が止まった雲雀を見下ろし、アラウディは終わりを宣言する。
「まだ・・・だよ・・・」
「そんな身体で何ができるっていうんだい?僕に敵わないのがわからないほど気味は愚かじゃないはずだ」
「・・・」
「今日は僕も楽しかったよ。じゃぁね」
それだけ言うとアラウディは現れたときと同じように消えていった。
2010/05/08 SS Trackback() Comment(0)
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